元イーベイ(eBay)チーフプロダクトオフィサーが語るブロックチェーンと商取引の未来

10月1日と2日に開催されたリップル社(Ripple)主催のカンファレンス「SWELL 2018」で、元イーベイ(eBay:世界大手のインターネットオークションを展開する企業)のチーフプロダクトオフィサーのRJ・ピットマン氏(R.J. Pittman)が登壇。アメリカの経済誌フォーチュン(Fortune)のシニアライターを務めるロバート・ハケット氏(Robert Hackett)の質問に回答する形式で進んだトークの内容を要約しました。

リップル(XRP)のチャート

国際商取引の可能性とは?

Q:eBayを辞めた理由は?

この5年間eBayにいたことは私のキャリアの中でも特別なフェーズだった。その間、eBayが経験した並外れた変化の多くは次の成長ステージにむけた戦略だった。その中でも大きな部分はeBayの中心的な要素である決済に関するものだ。ご存知のように、eBayは数年前、買収後10年以上も育ててきたPayPalを独立分社化した。PayPalは戦略的なパートナーで有り続けているが、この分社化によってeBayは、最大規模の国際取引プラットフォームとしての再成長を促進する機会を得た。

しかし、私はシェアリングエコノミーと呼ばれる世界の新しい秩序に、eBayよりもはるかに大きくて広範な機会を見出した。消費者が考える所有のモデルが変わったのだ。このようなモデルの先駆けとなるものを、UberやAirbnbで目にすることができる。しかし、私の考えでは、これは業界を変革するような何かの始まりに過ぎない。私は、今まで以上にもっと積極的にこの分野に参加したいと考えた。

Q:PayPal分社化に際してあなたの役割の変化は?

どのような会社でも、担当した製品のグローバル戦略を立てる際は、まず今持っている資産を調査し、競争の激しいグローバルなEコマース市場においてそれをどのように活用するかを考える。Eコマース市場には強力なプレイやーが多く存在するが、eBayは分散型のマーケットプレイスという独自のポジションを維持している。議論の余地はあるかもしれないが、22年前にeBayは、StubHub(スタブハブ)やPayPalとともにシェアリングエコノミーを発明した。

最初の仕事はこの3つをどのように足し合わせて1+1+1が10になるようにするかというものだった。非常に大きな戦略的機会があった。そして最終的に、分社化するという結論に至った。

その次の仕事は、決済と商取引というバックグランドを活かし、eBayの二度目のIPOを行うことだった。eBayは、2人しかいないスタートアップから始まり、取引可能な国は2カ国から190カ国にまで拡大した。eBayが消費者に提供できる素晴らしいサービスは、何かを売りたいときに190カ国の購入者に売ることができるということだ。

Q:国際商取引および決済に関してどのような苦労があったのか?

まず、国際決済処理の仕組みづくりは非常に困難な仕事だった。多くの点で進化と現代化を続ける決済処理業者および銀行インフラストラクチャーへの統合を維持することはさらに大変だった。決済サービスが新しい市場で普及するにつれ、eBayにとって中心的な要素となっていった。

Eコマースは世界中に広まっているが、消費者の視点からはまだ転換点を迎えられていない。米国の小売市場においてEコマースの割合は10%に過ぎない。米国よりもインターネットの普及がかなり遅れた中国では40%で、Eコマースユーザの数は増え続けている。中国のインターネット人口は7~8億人おり、これは米国の人口のほとんど倍に相当する。そして1兆ドルの事業が中国のEコマースプラットフォームで運営されている。現時点でさえ非常に大きな機会であると言えるが、まだ初期段階にある。そこで、決済が重要となる。

現在、Eコマースの割合は10%か15%あるいはせいぜい18%だ。これが75%になったらどうだろうか。それを支えることのできる決済インフラストラクチャーやスケーラビリティ、そしてコストモデルは現在存在するだろうか。グローバルな国際間決済処理チェーンは非効率で、米国内でのクレジットカード決済でさえ信じられないほどに古く、コストがかかっている。そこにイノベーションの機会がある。過去を捨て、サイズが5倍にも10倍にもなる成長の機会への扉を開くべきだ。

Q:Eコマースを変革する技術的トレンドは?

決済の進歩は階段的だ。何かを購入するという消費者の経験を改善する最初のステップは摩擦を取り除くことだ。Eコマースにおける消費者の購入体験を決定する要素は摩擦に関係している。決済の即時性と利便性という意味でスピードも摩擦の一部分だ。

大規模なEコマースビジネスや一般的な商取引ビジネスの経験があれば、決済フローをシンプルにし、ワンクリック購入機能などによって摩擦を減らせることが分かるだろう。だからこそ、eBayやAppleのような会社がマニアックなほどに摩擦を減らすことにこだわっている。

消費者の経験をシンプルにし、最小限に絞った情報を適切な場所に表示し、ボタンのサイズを調整する。ボタンのサイズを少し大きくするだけで、売り上げが数千万ドルあるいは数億ドル変わるかもしれない。

またGoogleのようにスピードを重要視しなくてはならない。検索結果を返す時間は数百ミリ秒だ。そのようなミリ秒単位の時間が積み重なってユーザの経験に影響を与える。このようなことはEコマースでも同様だ。決済にかかる時間が今日よりも改善すれば、コンバージョンも改善する。パフォーマンスの向上と摩擦の減少は、顧客を獲得し増加させていく上で重要だ。ARやVRである必要は無いが、まったく新しいレベルのパフォーマンスと摩擦の減少を実現しなくてはならない。

仮想通貨とブロックチェーンの行く末

Q:ブロックチェーンについての考えは?

ブロックチェーンと分散台帳技術、そしてGoogleのような企業から出てきたMapReduce(マップリデュース)技術などについては非常にわくわくしている。MapReduceは、計算集的な作業で、ジョブを例えば1,000個の細かいジョブに分割し、分散して処理した後に計算結果を集約するような処理だ。これにより、アーキテクチャーをより柔軟でスケール可能なものにすることができる。

似たような非中央集権的な処理を、価値の処理、管理、および決済に利用することができるだろう。SWELLの壇上にいるからそのように言うのではなく、リップルが実現したことは非常に興味深い。インターレジャープロトコルは、ちょうどインターネットにおける TCP/IPのように、価値の通信のためのプロトコルだ。

eBayが今日に至ってもまだ解決しようとしている課題は、より良いエスクロー(第三者預託)システムをどのように構築すれば良いのかという問題だ。なぜなら、eBayは販売者と購入者のいる分散型のマーケットプレイスであるため、購入者は販売者が商品を送ったのかどうか、販売者は購入者が支払を行ったのかどうかを知ることができない。ほとんどの国ではPayPalがそれを仲介しているが、すべての国に対応しているわけではない。カスタマーセンターには商品がどこにあるのか、支払いは行われたのかという質問が来る。このような摩擦の問題は、ほんの少しの変化でもeBayの金融アーキテクチャーに大きな影響を与える。

よりシンプルかつ高速で、誰もが便利に利用することができ、ボタンをクリックするだけで家に居ながらにして注文することができ、気に入らなければ返品し、すぐに返金処理が行われるようなサービスがあればもっと多くの人が利用するようになるだろう。すべてのEコマース事業者や小売商、そして銀行や金融機関はそのようなサービスが業界を変革するということを理解しているが、自身でこの問題を解決する立場にはない。だからこそリップルのような企業が必要だ。

Q:仮想通通貨についてはどう考えている?

ブリッジ通貨としての仮想通貨が最も良い最初のユースケースだろう。その点ではよく機能しているし、eBayのような国際取引事業にとっても非常に興味深いものだ。しかし、ブランドについては課題がある。仮想通貨の目的や価値、そして能力は十分に理解されているとは言えず、市場のボラティリティによって人々の関心は別のところに向けられている。

企業は原点に立ち戻って、仮想通貨の正しい位置づけに投資し、決済や商取引、そして銀行業のような本来の役割を再設定しなければならない。正当な流動性とブリッジ通貨というのが仮想通貨にとって良い出発点となるだろう。

Q:最近ブロックチェーンを導入したオンラインマーケットプレイスOverstock.comについては?

彼らのアプローチは興味深い。私はEコマース業界で長年働いてきたが、スタートアップ企業にとって破壊を起こすことや財務構造を変えることは非常に難しい。Overstockがやろうとしていることは、人々が期待しているようなことだろうし、eBayと同じ問題に直面しているだろう。彼らのようなEコマース業界のプレイヤーの存在は、私たちにとっても良いことだ。

Overstockは数年前にビットコインを決済手段として受け入れ始めたが、それがどうなっていくのか興味深い。ボラティリティによって売り上げが変動するため、小売業者にとってはそれが課題だ。ビットコインの受け入れは早すぎたかもしれない。消費者の大多数はビットコインのコンセプトやなぜ必要か分かっていない、業界と消費者の双方に対して仮想通貨に関する教育が必要だ。

Q:ブロックチェーンはどのように経済的な機会を創出し、世界に取り込まれ行くのか?

eBayの使命はすべての人に経済的な力を与えることだ。世界の人々は誰でも何か売りたいものや価値のあるものを持っている。それがシリコンバレーであっても中国やインドの田舎であっても、そのような人々がワンクリックでアクセスでき、取引ができるような流動性を提供したい。しかし、今のところ、銀行サービスを利用していなければそれは困難だ。インターレジャープロトコル(ILP)のアイディアにより、人々は中央集権的な処理や通貨を必要としない本当の意味でのP2Pの取引が可能になるだろう。

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Source: 仮想通貨ビットコイン

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